出店の相談が「人生相談」になる街で – すすきのの夜で見た“熱”と開業の現実|若手経営者の出店相談


すすきのには、派手な成功がある。
同時に、その成功が何事もなかったように消えていく瞬間もある。昨日までの主役が、ある日ふっと表舞台からいなくなる。歓楽街という場所は、称賛と同じ速度で疑いと噂も走り出す。

俺は不動産仲介だけでなく、店舗の運営に近い**不動産管理(テナント管理)**の現場も見ている。だから、表に出る前の“始まり”と、静かな“終わり”の両方を拾ってしまうことがある。今回は、すすきののBAR出店相談で実際に起きた出来事を、記録として残す。

出会いは「違和感」から始まった

十数年前、ある若い男と知り合った。仮にHとする。
当時20歳。元ホストで、プレイヤーとしては中堅どころだったと聞いている。俺が会った頃、彼はバーの店長を任されていたが、表情にはいつも焦りが混じっていた。「自分のやりたい形にならない」——その苛立ちが言葉の端々に出ていた。

やがて彼は、その店を引き取ることになる。
細かい経緯までは追えていない。ただ、外から見える範囲では立ち上がりが異様に早かった。売上も人の出入りも、勢いを帯びていった。

そして、予想より早く次の連絡が来た。

「もう一店舗、出したい」

出店計画は加速し、現実が追いつかなくなる

そこから先は、電話と打ち合わせの連続だった。
本来、不動産の依頼はありがたい。だが、今回俺の時間を奪ったのは物件探しだけではない。

  • 内装の仕様が細かく変わる

  • 資金の話が揺れる

  • 審査の壁にぶつかる

  • 気づけば私生活の相談に話題が滑り込む

“出店相談”の皮をかぶった“人生相談”。すすきのでは珍しくない。

冷静に見れば、準備は足りない。年齢的にも信用面でも、壁は高い。
それでも彼は止まらない。問題を生んでは次の一手で巻き返そうとする。熱量だけが先に膨らみ、周囲を引っ張っていく。俺はそのたび、現実の制約を説明し、調整し、火消しをする側に回った。

正直、きつかった。

それでも手を貸してしまう理由

不思議なことに、俺は距離を取れなかった。
すすきのでは、数字や肩書きより先に、人の心を動かす“熱”がある。言葉が荒くても、計画が未熟でも、「やる」と決めた人間の目には火が入る。その火は、周囲の判断力まで揺らす。

俺は、彼の未完成な計画に惹かれてしまった。
それがどこへ向かうのか、どんな代償を連れてくるのかも分からないままに。

こうして、期待と不安が同居した“加速”が始まった。

——次は、この加速の先で起きた出来事と、そこで見えた「歓楽街の現実」を書く。