
北海道の鈴木直道知事は11月28日、泊原子力発電所3号機の再稼働を容認する考えを示した。立地・周辺4町村の同意が出そろい、東日本で停滞していた原発活用が一歩進む形となる。増加する電力需要への対応が背景にある。
札幌の朝は薄い雲が垂れ込み、街を歩く人の吐息が白く浮かんでいた。11月28日、鈴木直道知事が道議会で泊原子力発電所3号機の再稼働を容認する意向を示し、北海道の電力政策に大きな節目が訪れた。新規制基準に適合したとされる同機は、2012年から停止してきたが、再稼働に必要とされる行政プロセスの最後の段階へ踏み出した格好だ。知事は原発活用について「当面取り得る現実的な選択」と答弁し、増加する電力需要への対応を理由に挙げた。
背景には道内の電力需要の急増がある。生成AIや半導体産業向けのデータセンターが相次ぎ、今後10年間で電力需要が13%増える見通しだ。札幌中心部でも新施設の建設計画が増え、すすきの周辺では再開発に伴う電力消費の増加も想定される。再生可能エネルギーの導入は進むものの、気象条件に左右されやすく、一定量の安定電源の確保が必要と指摘されてきた。こうした状況で、泊原発3号機は道内の電力需給を下支えする存在として再び注目されている。
地元自治体の動きも、この決定を後押しした。泊村、神恵内村、共和町に続き、28日には岩内町が臨時町議会で同意を表明した。地元4町村の同意が出そろったことで、再稼働に向けた地域合意の枠組みが整ったことになる。岩内町では経済波及効果や雇用創出への期待が語られ、地元関係者からは「地域として前へ進む判断」との声も聞かれた。札幌の飲食店街でも、「電力の安定は経営に直結する」と話す店主がいた。ネオンが濡れた路面に反射する夜のすすきのでは、冬の繁忙期を前にエネルギー供給の動向を気にする声が広がっている。
一方で、再稼働は電気料金にも影響を与えるとされる。燃料費の差により、原発の発電コストは火力より低い水準にあり、道内の家庭向け電気料金は他地域より割高な状況が続いている。泊原発3号機は地域の電力需要の5分の1から3分の1を賄うとされ、再稼働によって電気料金の負担軽減が期待されている。東日本ではこれまでに稼働している原発が極めて少なく、今回の容認表明は先行して再稼働議論が進む他地域と足並みをそろえる動きと見る向きもある。
知事は今後、現地で安全対策を自ら確認し、住民の声や議会の議論を踏まえて最終判断を行う考えを示した。冬の気配が深まる札幌では、冷たい風の中を歩く人々の足音が静かに響く。すすきのの灯りが夜を照らすその下で、道内の電力をどう確保するかという長年の課題が、次の局面へ進みつつあるようだった。





