“日本から消えるかもしれない”ホッキョクグマ危機――円山動物園が挑む繁殖の最前線と、いま知っておくべき現実


円山動物園の人気者に「後継者不足」という現実

札幌・円山動物園のホッキョクグマは、来園者の視線を一身に集める存在だ。大きな体に、どこか愛嬌のあるしぐさ。子どもから大人まで「かわいい」「また来たい」と口にするのも自然だろう。

だが、その“人気”とは裏腹に、ホッキョクグマはいま国内で静かに減り続けている。かつて国内の飼育頭数は1995年に67頭をピークに、その後減少。報道時点で「現在は30頭」とされ、さらに2026年もすでに1頭が死んだと伝えられている。

このままでは、「日本の動物園からホッキョクグマが姿を消す」可能性すら現実味を帯びている。

なぜホッキョクグマの繁殖はここまで難しいのか

ホッキョクグマの繁殖が難しい理由の一つとして、メスの発情の兆候が分かりにくいことが挙げられている。発情のサインが外から見えにくく、「ベストなタイミングで合わせるのが難しい」という現場の声も報じられた。

さらに、相手が大型動物である以上、同居には常にリスクが伴う。繁殖は「ただ同じ場所に入れれば成立する」ほど単純ではなく、個体の性格・相性・ストレス反応・環境条件が、結果を大きく左右する。

円山動物園のいま:リラとライト、同居から始まった挑戦

円山動物園では、メスのリラとオスのライトが、繁殖に向けて1月から同居を開始している。初めての同居でライトは緊張気味とも伝えられ、園側はどちらかがパニックにならないよう監視を続けているという。

過去に円山動物園で繁殖が成功した際には、赤ちゃん誕生が大きな話題になった。だからこそ今回の取り組みには、動物園の未来だけでなく、国内の飼育・繁殖の流れをつなぐ意味合いも重なる。

釧路市動物園のケースが示す「繁殖のリスク」

一方で、同じ北海道内でも繁殖のハードルは高い。釧路市動物園には、熊本の動物園から展示目的で来たメスの「マルル」が紹介されている。

釧路市動物園には繁殖経験があるものの、過去には2頭の間で突然の闘争が起き、1頭が死んだ経験があるという。そのため、現在の園内環境では繁殖は難しいとの認識が示されている。

この事例が突きつけるのは、繁殖=希望であると同時に、繁殖=事故リスク管理でもあるという現実だ。成功だけを願っても、現場はその何倍も冷静に「安全」と「最適条件」を積み上げなければならない。

私たちにできること:応援は「増やして」ではなく「支える」

ここで大事なのは、感情論で「増やしてほしい」と言うことではない。現場はすでに、増やすための“難題”を抱えながら挑戦している。

来園者側ができる応援はシンプルだ。

動物園の取り組みを知り、正しく理解して発信する(拡散は“誤解”も増やすので丁寧に)

混雑時に無理な観覧をせず、動物への負荷を減らす

動物園の保全・教育活動への参加(イベント・寄付・公式情報のチェックなど)

ホッキョクグマは、ただ“かわいい”だけの存在ではない。いま目の前にいる個体は、国内の飼育史のバトンを握っているかもしれない。だからこそ、私たちは「応援の仕方」をアップデートする必要がある。


ホッキョクグマの話は、動物園のニュースで終わらない。「希少なものが、ある日突然いなくなる」現象は、だいたい静かに進む。円山の同居は派手さよりも緊張感がある取り組みで、結果がどうであれ、この挑戦を社会が“理解して見守れるか”が次の分岐点になると感じた。