「成功と孤独は、いつも背中合わせ」


日本一真面目(不真面目)な異端児が本音で話す HA 〜すすきの不動産社長コラム〜 すすきのという街と、すすきの不動産仲介 —光と影の狭間で— Vol.4

北海道随一の歓楽街・すすきのでテナント仲介・管理件数No.1を誇る「ホームエージェント」。同社の中川紀仁社長に“ススキノのイマ”を6回にわたって語ってもらう。

夢と現実 夜の歓楽街は、まどろむ夢のように幻想的でありながら、どこか現実味を帯びている。だからこそ、多くの夢が膨らみ、そして破裂していく。今回のH氏は、そんな夜のすすきのに光を放つことができるのだろうか。

先を見る眼 わずか1年足らずで2店舗を軌道に乗せ、勢いのまま3店舗目へと挑む。果たしてそれは無謀なのか、それとも本物の資質の証なのか。今回の彼のビジネスモデルは、近年すすきのにとどまらず、都心部でも注目されるトレンドに属している。なんとH氏は10年以上も前から“時代を先取りしすぎた業態”を構想に見据えていた。正直なところ、私にはそのシステムも世界観も全く異次元で、理解の外にあった。だが、不思議なことに、彼ならば形にしてしまう、そんな確信めいた予感があったのだ。

15坪という希望 当時、狸小路には空きテナントが目立ち、初期費用や賃料も今と比べれば破格だった。しかし、それは“難関のサイン”とも受け取れる光景だった。 彼が選んだのは、数ある物件の中からあえてスケルトンの物件。わずか15坪という空間に、彼は高級志向の内装を施すことを決意する。坪単価50万円を超えるその設計は、当時でも破格。契約金と合わせて総額1,000万円規模の勝負であった。

利益は通過点? 「ランニングコストこそ抑えられる条件ではあったが、それでもかつては“成り立たない”と烙印を押された場所。そんな中で、彼は迷いすら見せず、すべての利益をフルベットする形で勝負に出た。それは、2店舗目以上に明確な勝算を持った、ある種の博打にも見えた。(私目線です) 彼を突き動かしていたのは何だったのか。その先に見据えた目標とは、どこまでの利益追求が、彼の『満足中枢』を満たすのか。」

成功とは? 結果として、商売の女神は彼に微笑んだ。彼はキャッシュポイントの構築に長けていた。2025年現在も、多少のコンセプト見直しがあったように見えるものの、事業は安定しているようだ。 ……だが。彼の輪郭は、どこか澄んで見えた。外側はまだあるのに、内側から少しずつ色が抜け落ちていくような——そんな印象だった。 肌は淡く乾き、髪は風の流れに逆らうこともなく揺れている。視線は誰にも届かず、ただ空気の奥を彷徨っていた。言葉には起伏がなく、語尾は音もなく沈んでいく。笑みは形だけが残り、そこに意味は感じられなかった。 かつて熱を宿していたその瞳には、もう光の痕跡さえなかった。それは「疲れ」や「倦怠」といった言葉では届かない、静かに、しかし確かに、何かが終わりかけているような空気だった。

光の輪郭 誰もが「掴んだ」と思った彼の成功は、黒い何かに覆われていた。歓楽街の闇。それは、時に最も眩しい光を放った者にこそ、最も深く忍び寄るのかもしれない。 運命は、いつも思いがけない。


今回の取材で印象的だったのは、「成功」という言葉の軽さと重さだった。

数字は確かに結果を証明する。しかし、歓楽街という特殊な市場では、結果の裏側にある“精神の摩耗”までは可視化されない。

H氏の事例は、単なる成功譚ではない。むしろ、先見性・胆力・資金投下という経営者の資質が揃った人物でさえ、内側から静かに削られていく可能性があるという事実を浮かび上がらせる。

すすきのという街は、挑戦者を歓迎する。同時に、等価交換以上の代償を求める街でもある。

その現実を、あえて淡々と語る中川社長の視点に、この連載の価値があると感じた。