札幌市の住宅街で行われている排雪の仕組みが、見直しに向けて動いています。2026年10月13日に開かれた「令和8年度第2回札幌市雪対策審議会」では、町内会などと市が費用を分け合う排雪支援制度を廃止し、市が主体となって全地域を対象に排雪する「公共排雪」へ切り替えるべきだとする提言案が示されました。
ただし、制度の廃止や全市一斉の切り替えは、2026年10月24日時点で正式決定していません。2026年度は従来の排雪支援制度を継続しながら、市内の一部地域で新しい方法を試す段階です。地域によって今冬の扱いも異なり、東区では区内全域の市道を原則として対象とする試験施工が予定されています。
町内会の費用はどうなるのか。排雪される雪の量は増えるのか、減るのか。今冬の対応と将来の制度案を分けて確認する必要があります。
10月13日に示されたのは「制度変更の決定」ではなく提言案
札幌市雪対策審議会は、市の雪対策を幅広い立場から検討する審議会です。市の公式資料「審議会答申(案)の整理について」には、生活道路の排雪支援制度を廃止し、全地域を対象とした公共排雪へ切り替えるべきだという方向性が明記されています。
提言案が挙げる理由は、地域での合意形成や費用負担が重くなっていること、町内会の加入状況や制度の利用有無で不公平感が生じていること、そして作業を効率化する必要があることです。市が主体になれば地域からの申請を前提としない方法も考えられますが、それだけで排雪量や作業回数が現在より増えるという話ではありません。
同じ資料では、移行時に一時的な経費増加が見込まれるとしたうえで、最低限の通行を確保しつつ運び出す雪の量を抑え、経費を可能な限り増やさない方法を検討するよう求めています。除雪事業者の体制づくりや町内会の準備が必要なため、移行予定を早く示すことも提案しています。
今回の資料は、審議会が今後まとめる答申の「案」です。審議会の開催情報によると、10月13日の議事録は後日公開とされていました。案が提示されたことと、札幌市が新制度の開始日・予算・作業内容を決めたことは、分けて考える必要があります。札幌市雪対策審議会の開催ページで審議資料や今後の議事録を確認できます。
現行制度は「パートナーシップ排雪」と「市民助成トラック」の2種類
札幌市が公開する「生活道路の排雪支援制度」によると、市が除雪する道路は約5,400km。そのうち、交通量の多い幹線道路や一部の通学路など約1,600kmについては市が排雪しています。一方、住宅街の生活道路すべてを市の通常の作業で排雪する体制にはなっておらず、地域の希望に応える制度が設けられています。
パートナーシップ排雪制度:町内会などが申請し、地域と市で費用を負担
1992年に始まった「パートナーシップ排雪制度」は、町内会または地域の排雪のために設けた非営利の団体などを対象とします。地域では利用するかどうかの合意を取り、申し込みを行い、所定の地域支払額を負担します。札幌市は受け付けや作業指示、日程の決定、市負担分の支払いなどを担当し、受託業者が機械による排雪を行う仕組みです。
道路幅が10m未満の場合は原則として地域支払額が発生し、幅10m以上の道路では市が全額負担する場合があります。ただし、10m以上の道路だけを申し込むと地域にも負担が発生するなど、条件があります。道路のすべての雪を除去する制度ではなく、標準断面と、雪を多めに残して負担を抑える抑制断面から作業内容を選択する方式です。
札幌市公式ページに掲載されている2025年度の地域支払額は、標準断面が1km当たり516,400円、抑制断面が1km当たり361,500円です。これは2025年度の表示額であり、2026年度の確定額として引用できるものではありません。道路延長に応じた地域全体の支払いであって、各世帯へ一律に請求される金額を示したものでもありません。詳しい条件はパートナーシップ排雪制度の案内に掲載されています。
市民助成トラック制度:トラックを無償貸与、積み込みなどは地域が担当
もう一つの「市民助成トラック制度」は、町内会などが道路の雪を運び出す際に、市が運搬用トラックを無償で貸し出すものです。ただし、積み込み作業、路面の整正、交通誘導などの安全管理、道路使用許可の申請は地域側が担います。トラックの貸し出しが無料でも、排雪作業全体を市が無料で代行する制度ではありません。
両制度とも原則として1シーズン1回で、同じシーズンに重複して利用することはできません。2026年度も制度自体は継続する方針ですが、実際の申込可否は試験施工の対象路線かどうかで異なります。市の制度案内には2025年度の申込期間が残っているため、これを2026年度の受付日程と取り違えないよう注意が必要です。条件は市民助成トラック制度の案内でも確認できます。
なぜ変えるのか。負担と公平性に加え、人手不足も課題
札幌市は2023年度から「生活道路除排雪の在り方検討」を進めています。市の説明によれば、排雪支援制度は生活道路全体の約7割、延長約2,600kmで利用され、近年は年間1,200~1,300団体ほどから申し込みがあります。多くの地域で利用されている半面、申請や支払いを続けられるかどうかが、町内会の状況に左右される仕組みでもあります。
10月13日の審議会資料「事務局からの報告事項」には、2026年6月26日から8月31日に実施した町内会長・自治会長向けの調査結果が掲載されています。全区の2,157人を対象とし、986件の回答がありました。回答率は約46%です。
費用負担感の設問に回答した756件のうち、「非常に負担が大きく、他の活動を制限しなければならない」が82件、「負担は大きいが、何とかやりくりできている」が473件でした。合わせて555件で、回答の約73%を占めます。負担が重いという声は、抽象的な印象ではなく、町内会側を対象にした調査でも確認されています。
また、今後の検討で重視する点を尋ねた設問では、931件の回答のうち「排雪作業の公平性の確保(公共排雪への移行)」を選んだものが635件で最多でした。一方、「従来制度のような地域の自主性の確保」を選んだものも288件あります。複数回答のため単純な二者択一ではありませんが、費用負担の軽減を求める声と、地域が自ら決められる仕組みを残したい声の両方があることが分かります。
札幌市が示す検討課題は、費用だけではありません。除雪従事者の高齢化と将来の担い手不足、在宅介護や宅配の普及による住宅街の道路利用の変化、局地的な大雪や急な暖気への対応も含まれます。制度を全市に広げても、必要な車両と人員が確保できなければ同じ作業を続けることは難しくなります。
2026年度の試験施工は何が違う? 東区では申請不要・地域支払額なし
将来の制度変更とは別に、2026年度の冬には、札幌市が主体となる「生活道路除排雪の試験施工」が予定されています。札幌市東区は2026年10月5日付のお知らせで、東区内全域の市道を原則対象とし、全額市負担で試験施工を行うと発表しました。他区で除排雪を担当する一部地域などは対象から除かれます。
東区の住民向け案内では、これまでの制度と試験施工の違いが具体的に示されています。従来のパートナーシップ排雪などは、一般的な幅8mの道路で排雪幅約6mを目安とするのに対し、試験施工では道路幅の6~7割、約5mを目安とします。路面に残す雪の厚さは、どちらも約10cmです。幅が狭い道路では機械が安全に作業できる範囲になります。
試験施工では運び出す雪の量を抑えながら、通行環境を確保できるか確かめます。道路からすべての雪がなくなるわけではなく、雪をどこまで残すかが検証の一部です。排雪作業は降雪状況に応じて1月中旬ごろからとされ、町内会との事前日程調整は行わず、効率のよいルートや作業時間帯を設定します。
東区の対象路線については、試験施工の申請手続きも地域支払額も不要です。その一方、今冬は試験施工の効果や影響を確認するため、対象の市道についてパートナーシップ排雪の申し込みを受け付けないと明記されています。私道は試験施工の対象外であり、私道の排雪を希望する場合は従来の排雪支援制度を利用できると案内されています。
なお、作業日や昼夜の時間帯は降雪や道路状況などに合わせて決まるため、東区は事前に個々の作業日時を知らせることはできないとしています。従来の町内会ごとの日程調整とは異なる点です。東区内の具体的な路線の扱いは、東区の公式案内と東区土木部維持管理課(011-781-3521)で確認できます。
市内全域で同じ方法になるわけではない
札幌市が10月13日の審議会に提出した資料では、2026年度の試験施工の実施場所を「10区において調整中(今月中に決定予定)」と説明しています。これは、各区の生活道路がすべて同条件で排雪されると決まった、という意味ではありません。試験施工の区域や対象路線については各区からの発表を確認する必要があります。
同資料で掲げる主な検証内容は、従来の支援制度を利用していない地域も含めて効率的に作業できるか、実際の費用はいくらかかるか、排雪量を抑えても車や歩行者の通行に大きな支障がないか、地域負担をなくすことで不公平感が改善するか、という点です。作業後は2027年3月ごろにアンケートなどで効果と影響を確かめる予定とされています。
2025年度にも厚別区・清田区全域で約570kmを対象とする試験施工が予定されていました。しかし、2026年1月25日の大雪を受けて生活道路の緊急排雪に移行したため、2025年度の試験施工は中止になりました。札幌市公式ページに残る厚別区・清田区の試験施工の記載は2025年度の計画を示すものであり、そのまま2026年度の確定対象地域と読むことはできません。
過去には2023年度に9区10地域・約28km、2024年度に3区4地域・約24kmで試験施工が行われています。市は、現行制度より運搬する雪の量を抑えられたことや、小形ロータリ除雪車を活用できたことを検証結果として示しています。ただし、限られた地域で得た結果だけで、札幌市全域でも同じ費用や道路状況になると結論付けることはできません。
2027年度以降はどうなる? 費用・開始時期・道路水準は未決定
今後の予定について、10月13日の市の資料は、2026年度中に審議会の答申を踏まえて排雪支援制度や生活道路の除排雪の方向性を含む「基本方針」を策定し、2027年度以降に基本方針と今冬の試験施工の結果を踏まえて具体的な手法を決める、としています。
つまり、2027年度になった時点ですべての町内会負担がなくなるという決定ではありません。実際に公共排雪へ移行するか、いつ始めるか、どの道路を対象とするか、排雪回数や通行幅をどう定めるか、財源をどう確保するかは、今後の判断事項です。提言案では地域支払額の負担解消が目指されていますが、市の税金による全体の支出が減ると決まったわけでもありません。
町内会にとっては、会費からの排雪費負担だけでなく、住民間の合意形成や業者との調整の扱いが変わる可能性があります。道路を利用する住民、訪問介護の職員、配達事業者などにとっては、作業後の通行幅や、いつ排雪されるかが重要です。どちらの立場でも「申し込みが不要になるか」と「道路がどの程度通れるようになるか」は別の問題として確認すべきでしょう。
この冬、札幌市民と町内会が確かめたいこと
まず、自宅や店舗に面した道路が2026年度の試験施工の対象かどうかを確かめることが重要です。東区の対象市道では原則として地域負担のない試験施工が予定されていますが、私道などは扱いが異なります。それ以外の区でも、過去にパートナーシップ排雪を利用した道路が今年も同じ申込方式になるとは限りません。
次に、従来制度を使う地域は申込期間と地域支払額の年度を確認してください。札幌市の制度案内に掲載されている2025年度の受付日程や金額は、2026年度の確定情報ではありません。町内会の会計や予算を決める際は、前年と同額で計算する前に、お住まいの区の土木部維持管理課へ問い合わせる必要があります。
試験施工の対象地域では、排雪幅と作業日程の考え方も従来と違います。市が示した目安は、路面の雪を完全に取り除くことではなく、雪を残しながら通行を維持できるかを検証するものです。排雪作業の支障となる路上駐車や、敷地内の雪を道路へ出す行為を避けることは、従来制度でも市が注意を呼びかけています。
中央区のすすきの周辺で働く人にとっても、住宅街から都心へ通勤する経路や配送先への移動には生活道路が含まれます。ただし、今回の検討は住宅街の生活道路の排雪が主題であり、すすきのの幹線道路や繁華街の排雪スケジュールまで一律に変更すると発表されたものではありません。住居周辺の試験施工と、店舗周辺の道路管理を分けて確認するのが適切です。
市の検討状況は生活道路の除排雪に関する検討、審議会の答申案や会議資料は札幌市雪対策審議会の開催状況に掲載されています。制度の問い合わせは各区の土木部維持管理課、試験施工の制度全体に関する問い合わせは札幌市建設局雪対策室計画課(011-211-2682)が窓口です。2026年10月24日時点では、全市の制度変更を前提に申し込みや予算を変更する段階ではありません。
今回の提言案で重要なのは、町内会の費用負担をなくす方向性と、排雪作業の水準を見直す方向性が同時に示されていることです。市主体への移行が実現しても、従来と同じ幅まで雪を取り除くとは限りません。札幌市民にとっては費用だけでなく、日常の移動に必要な通行環境が保たれるかが判断材料となります。





